Kimono My House

うまでもなくシャイコーでやんした、スパークス@O-EAST。ほとんど指定席なんでフロアにパイプ椅子が並べてあり、当然のようにオーディエンスの年齢層は高いわけですが、フジロック効果もあってか、僕らと同じ20代前後のファンも沢山増えていたようでした。

前半の第1部は新譜『Exotic Creatures Of The Deep』をフルで演奏。スクリーンの映像や振り付けなんかはフジ参加者としては既視感があるけど、それでも楽しい。現地調達? の日本人女性ダンサー5名もたびたびステージに表れて、“(She Got Me) Pregnant”ではロン兄さん(なんと還暦)のコスプレ&妊婦姿でキーボードの周りを取り囲み、「あなたの子よ!」と言わんばかりに兄さんを睨みつけるという一幕もあったりして、全体的にスケール感アップ。兄さんのねっとり度も3割増し。初めは本調子でなかったラッセル弟の高音も、どんどん良くなっていきました。「この後はいよいよ『キモノ』やるよ! 日本で全曲披露するのはこれが初めてだけど、35年もかかっちゃったよ(笑)」というMCの後に第1部は終幕し、ステージ転換のためしばし休憩。

ほどなくして火蓋が落とされた第2部は、スクリーンも人間額縁もダンサーもすべて排除された原点回帰のソリッドなバンド・セット。アルバム冒頭曲“This Town Ain't Big Enough For Both Of Us”からして、先ほどとはオーディエンスの盛り上がりがケタ違いです。ラッセル弟の歌の再現度が完璧すぎてびっくりするが、バック・バンドの貢献も忘れてはなりませんね。レスポールの抜けもリフも最高だし、リズム隊も低音がバッチリ効いていて、これまた再現度高し。彼らなんてメイル兄弟の息子ぐらいの世代だろうに、キャリア40年にも迫るスパークスの楽曲をここまで咀嚼できているのは凄いことです。『キモノ』最終曲、“Equator”における、エンドレスのファルセット大合戦もおいしくいただきました。一度燃え尽きかけた弟に、ロン兄さんが後ろからジャケットをかけてあげようとして、拒否られるシーンも(笑)。

名残惜しそうにステージを後にしつつ、アンコールに応えて再登場した彼らがぶちかましたのは、なんと『Propaganda』2連発! これがまた非常に素晴らしいものでした。物販のカタカナ「スパークス」Tシャツに着替えたラッセル弟は、軽くメタボ気味だった気がしますが気のせいか。フィナーレはもはやお馴染みの“Suburban Homeboy”で大団円。前半のダンサーを除けば、ステージに立っているのは終始たったの5名だというのに、スタジアム照準の音圧と、オペラ級のコーラス・ワークは本当にお見事。かのフレディ・マーキュリーが歌唱を参考にし、かのモリッシーがスパークスの追っかけだったという逸話も頷ける。「生ける伝説」ともいえる存在でありながら、チャレンジ精神とアイデアたっぷりのニュー・アルバムを上梓したり、35年も前にリリースしたアルバムのナンバーでこれだけ大勢のファンを魅了したり、現役バリバリどころか何度目かの黄金期すら迎えているかのようなメイル兄弟。その底知れぬクリエイティビティには、大いに勇気を与えてもらいました。

行けなかった人は己の不運さを……というか、あと2日残っているので、絶対に無理してでも明日の公演に行くべきです。最悪、最終日の大阪まで足を運んでも絶対に後悔はしないし、むしろ一生の思い出になると思います。あると思います。さあみんなもスパーク! 全裸で。


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