Aimee Mann @ SHIBUYA-AX

と遅れましたが、およそ4年振りの来日となったAXでのエイミー・マンのライヴがそれはもう大変素晴らしかったです。グランド・ピアノやシンセ、弦楽器、ハイハットだけのドラム・セットなど、ステージに配置された楽器の多さに対して、意外にもエイミーの他は男性メンバー2名(どちらも芸達者)のみという、ミニマルかつアコースティックな編成。細身のデニムにストライプのジャケット、首もとにはスカーフ、そして知的さを漂わせるスクエア・フレームの眼鏡という出で立ちのエイミーは、その180cm前後の八頭身スタイルも手伝い、まるで大学の女性教師のよう。小走りでステージ袖から登場したチャーミングな姿も相まって、とても五十路目前とは思えません。ちょっとFF8のキスティス先生に似ていたかも(笑)。

開口一番、「今夜は、今までのB面曲やレコードに入っていないナンバーをやるわよ」と宣言した通り、『ロスト・イン・スペース』の限定盤にしか収録されていない“Nightmare Girl”を早くも2曲目で披露するなど、レア曲満載のセット・リスト。なんと、ニュー・アルバム『@#%&*! Smilers』からはたったの2曲しかプレイされなかった。とはいえ、『マグノリア』からもしっかりと“Save Me”や“Wise Up”といった馴染みの深い楽曲を挟んでくれたので、決して上級者向けには終わらない、アットホームな雰囲気が場内を包んでいたと思う。音源とは違った表情を見せる、秀逸なアレンジを施された名曲群にプロ意識を感じたし、ユーモアの効いたMCにはオーディエンスから笑みがこぼれる。ギターからベースに持ち替えた時のあの立ち振る舞いも、シビれるほどカッコいい。「2週間しか練習してないの」と弁明しつつも、彼女の吹くアルト・リコーダーはこれまた実に綺麗なハーモニーを奏でていた。そして何と言っても、あの「声」。気高さと温もりを纏った唯一無二のあの「声」が、音源以上の完璧なコンディションで表現されることに驚いたし、感動した。

先日の<フジ・ロック>の、ブライト・アイズによるアコースティック・セットを思い出したりもしたんだけど、メンバーがいつもと変わろうが、音圧が少なかろうが、ステージにその「人」がいるだけで、その「声」があるだけで、それはもう、どうやっても「そのアーティスト」のライブになってしまうのだなあ、と痛感。いくらトータスやバトルスのようにテクニカルなバンドであっても、誰か1人でもピースが欠けるだけで、著しく楽曲の再現度は下がるような気がする。しかし、シンガーソング・ライターの強みは、初めに「歌ありき」という点に尽きるのではないか。フル・バンド編成であっても、ソロ弾き語りであっても、楽曲の魅力が半減することはない。とりわけエイミー・マンは、キャリアもスキルも超一流のSSWである。最初はアコースティック仕様にとまどっていたオーディエンスも、終演後には大満足で会場を後にしたのではないだろうか。ティル・チューズデイ時代の“Voices Carry ”もやってくれたしね。世の女性は、エイミーの生き様と、あの素敵な歳の重ね方を勉強すべきです。男の俺でも憧れちゃうぜ。
All photos by Smashing Mag

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